ぽつり、ぽつり

「アグロ」
愛馬の名を呼び、その首筋を軽く撫でてやる
ただ、それだけなのに疲労感がじわじわと生まれてきていることにワンダは気付いていた

祭壇の上の少女は、全く微動たりともしない

神々しいその場所がフラッシュバックする
次の巨像を倒さねば
今のわたしの存在理由はそれだけ

はやく、はやく

わたしは野を駆けるもの
わたしはあの娘を蘇らせるもの
それまで、死んでは行けないのだ
あの娘がまた笑う姿がみたい
また、話し合ってわたしも微笑み返すのだ
はやくせねばあの娘の魂が遥か遠くに行ってしまう

「アグロ……行こう」

アグロはわたしの言葉が分かるかのように、擦り寄ってくる
まるでわたしに乗れと云うかのように
愛馬にまたがり剣を天に向ける
また光が集まった



ずしん、ずしん

この圧迫感に慣れることは一生ないだろう
だが、慣れることは無くとも、やらねばならんのだ
巨像を倒さねば
少女は救われぬ
巨像の足が、横切った
その後を追うように駆ける

最後の一撃は、やはり切ないように感じた

わたしは走る
巨像を倒す
それだけがわたしの存在する意味





だからわたしは野を駆ける
〈ワンダと巨像〉